第153章 エレベーターから出てきた男女

「はい、今です。」

三井愛の声には、優しい笑みが含まれていた。

電話の向こうで、佐藤和俊は淡々と言った。「今は時間がないんだ。時間ができたらにしよう。あるいは電話で何の用か教えてくれれば、手伝えるかどうか考えるよ。」

「じゃあ、また今度にするわ。その時に話すわ。」

三井愛は聞き出せなかったが、それ以上は追求しなかった。

電話を切る時、彼女は突然携帯の向こうから声が聞こえてきた。

ウェイターの声だった。彼らがクラブにいることがわかった。

三井愛は直接運転手にクラブへ向かうよう指示した。

プライベートクラブの中。

佐藤和俊が個室に戻ると、上野卓夫が彼がさっきテーブルの下に置いたお酒をまた取り出して飲んでいるのを見た。

彼は美しい眉をしかめ、大股で近づいた。

手を伸ばして上野卓夫の手からグラスを奪おうとしたが、避けられた。