[二章を一章にまとめて更新]
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秋田結は姿勢も構わず椅子に寄りかかっていた。
片手にスマホを持ち、もう片方の手はテーブルの端に置き、
唇の端には薄い笑みを浮かべ、澄んだ瞳には少し投げやりな、そして皮肉めいた色が宿っていた。
しかし、そんな眼差しに秋田由貴子は何故か胸がざわついた。口に出そうとした言葉を飲み込んでしまった。
携帯の着信音が鳴り、秋田由貴子は着信表示を見た。
そして目の端で秋田結をちらりと見てから、素早くベランダに向かい、ドアを閉めてから電話に出た。
食卓で、秋田結は淡々と視線を戻し、キッチンで彼女に冷麺を作っている秋田鉄平の凛々しい背中を見つめた。
「鉄平さんは本当に結に優しいわね」
三井愛は秋田結がキッチンの秋田鉄平を見ているのを見て、皮肉っぽく笑った。