第246章 過去との別れ

彼女の声は慌てと泣き声に満ちていた。

画面越しに、秋田結はその瞬間、彼女の無力さと恐怖を感じ取ったようだった。

彼女は手に持っていた卵をしっかり握れず、足元の床に落としてしまった。

鈍い音がして、卵の白身と黄身が流れ出した。

彼女は唇を引き締め、素早く一行の文字を打って送信した。【怖がらないで、どうしたの?今どこにいるの?具体的な場所を教えて。】

「彼が、また私を犯そうとしたから、私は彼を殺してしまったの、私は、C国にいるの……」

渡辺由梨はすすり泣きながら、言葉を不明瞭に発していた。

秋田結はそれをはっきりと聞き取った。

【わかったわ、慌てないで、怖がらないで。こういう状況は正当防衛よ。まず確認して、彼が息をしていないか確かめて、あなたがこれ以上傷つけられないようにして。】