第264章 彼女の薬指の指輪

澄んだ瞳に驚きが走った。秋田結は、彼がこのように上階に行きたいと提案するとは思っていなかった。

徹夜でも問題ないって?

彼は問題ないかもしれないが、彼女には問題がある。

秋田結は美しい眉を軽く寄せながら、彼の深い瞳を見つめた。「本当に、上がりたいの?」

「都合が悪い?あなたは、一人で帰ってきたわけじゃない?」

上野卓夫は問い返した。

そして彼女をもう一度じっくりと見つめた。

最後に、彼の視線は彼女の薬指の指輪に落ちた。

彼は病院の病室で、すでに彼女の指にはめられた指輪を見ていた。

しかし、わざと無視して、彼女に尋ねなかった。

今、彼女が「本当に上がりたいの?」と尋ねるのを聞いて。

彼は再び彼女の指の指輪を見て、胸が不思議と詰まる思いがした。

秋田結は彼の視線を避け、「一人じゃないわ」と言った。