秋田結は上野卓夫が言っていた写真、彼女の母親とおそらく彼の父親であろう男性が写っている写真を探そうと思った。それがこのアルバムの中にあるかもしれない。
しかし。
伊藤明史の声がドアの向こうから再び聞こえてきた。「結ちゃん、中にいるのか?」
声と共に、ドアノブを回す音も聞こえてきた。
秋田結はハッとした。
素早くアルバムを置き、引き出しを閉めた。
外の人は、彼女に時間を与えているようだった。
彼女が引き出しに鍵をかけると、ようやくドアが開いた。
数メートルの距離を隔てて、伊藤明史はドアノブを握り、彼女を見つめていた。
「結ちゃん、すぐに出てきて。」
彼は表情を変え、小声で彼女を呼んだ。
秋田結は冷たい目で逆光に照らされた伊藤明史の顔を見つめた。
伊藤明史はもう一度言った。「美咲ちゃんが上がってきたよ、早く出ておいで。」