「出張するの?」
秋田結はさりげなく尋ねた。
「うん、会社で急な問題が起きて、自分で処理しに行かなければならない。早ければ一週間で戻ってくるよ」
伊藤明史は辛抱強く説明した。
「わかった」
秋田結は言い終わると、すぐに電話を切った。
病院に着くと、ちょうど伊藤母に食事を届けに来た三井美咲に出会った。
「姉さん、なんて偶然。誰にお昼ご飯を届けるの?」
三井美咲は早足で秋田結に追いつき、好奇心を持って尋ねた。
彼女はマスクをしていたので、秋田結は最初気づかなかったが、声を聞いて振り返った。
彼女の手にある保温容器に視線を走らせ、「兄に食事を届けに来たの。あなたは伊藤おばさまに食事を届けるの?」
「うん、これは私が手作りのスープよ。伊藤おばさまが好きだって言ってくれたから、毎日作ってるの」