c国。
上野卓夫が毒蜘蛛の指定した場所に到着したとき、すでに夕暮れ時だった。
携帯の着信音が鳴る。
彼はすぐに応答ボタンを押し、車の窓ガラス越しに、鋭い冷たい目で外の邸宅を見つめた。「着いたぞ」
電話の向こうから、笑い声が聞こえてきた。
「お前の女に会いたければ、一人で中に入れ」
毒蜘蛛は監視カメラの映像から、邸宅の外に停まっている黒いSUVを見ていた。
車は一台だけだが。
一台の車には、何人も乗れるものだ。
上野卓夫は軽蔑するように冷笑した。「お前の犬に、門を開けさせろ」
毒蜘蛛は電話越しに一言命じた。「彼に門を開けろ」
目の前の朱塗りの大きな門がゆっくりと開いた。
「旦那様、一緒に入りましょう」
運転席で、天満徹の目には濃い心配の色が溶けきらないほど浮かんでいた。