「知心、お前のチキンレッグが焼けたよ。」
藤原美咲はキッチンから出てきて、手にチキンレッグの皿を持っていた。
知心はチキンレッグを見て、その香りを嗅ぐと、一時的にママへの思いを脇に置いた。
にこにこしながら藤原美咲についてダイニングルームへ行った。
知恵ちゃんはダイニングルームの入り口まで行くと、振り返って秋田鉄平の方を見た。
秋田鉄平は彼女の目に映る心配を見て、微笑みながら手を振った。
知恵ちゃんはすぐに彼の前に戻ってきた。
「後でかけ直すよ。」
電話の向こうの湯川大助にそう言うと、秋田鉄平は通話を終えた。
「知恵ちゃん、ママのこと心配してるの?」
秋田鉄平は前に進み、しゃがんで知恵ちゃんと目線を合わせた。
知恵ちゃんは唇を噛み、うなずいて、小さな声で尋ねた。「おじさん、ママは本当に何かあったの?」