「どうしたの?」
相手の目に異変が走ったのを捉え、秋田結は心が凍りつき、すぐに眉をひそめた。
「上野卓夫の怪我について、私が知らないことがあるの?」
「いいえ、いいえ、そうではありません」
若い医師は手を振り、首を横に振った。「それでは、こういうことにしましょう。上野さんが目を覚ましたら、あなたたちの物語を聞かせてください。あなたの電話番号は?友達になれますか?」
「いいですよ」
秋田結の携帯電話は以前、誘拐犯に取られてしまった。
山崎敬が彼女に新しい携帯を買ってくれた。
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10分後。
秋田結は集中治療室のドアを押し開けた。
ベッドに横たわり、全身に機器や管が繋がれている上野卓夫を見ると、また熱いものが胸に込み上げ、鼻先まで広がった。
瞬く間に目が潤んだ。
彼女は唇を噛み、ドアを閉めてベッドに向かった。