057 有能な秘書

黒いマイバッハがツインタワーに曲がり、会社の入り口に停車すると、片桐陽向がドアを開けて降りた。

社長室に戻ると、江川源が迎えに来た。

「片桐社長、人事部の面接が終わり、第一次選考の結果が出ました。全部で五人が残り、人事部は秘書を何人採用するか伺っています。」

片桐陽向は足を止めずに言った。「以前の規定の半分、給料は倍にする。」

江川源は彼の後ろについて社長室に入った。「以前の規定は四人でしたから、半分なら二人ですが、少なすぎませんか?」

片桐陽向は彼を冷たい目で一瞥した。「人が多すぎると、社長室で宮廷闘争でも演じさせるつもりか?」

「あ……」江川源は言葉に詰まった。

片桐陽向は続けた。「高給で雇った人間が仕事ができないなら追い出せ。」

「はい、人事部に機転が利いて仕事のできる人を二人選ぶよう伝えます。」江川源は明らかに片桐陽向の今日の機嫌が悪いことを感じた。