059 完成できなければ退場

森川萤子は、ここで片桐陽向に出会うとは思ってもみなかった。彼が皆に囲まれて持ち上げられているのを見て、天匠グループでの彼の地位が低くないことがわかった。

会議が終わり、幹部たちが次々と退室する中、森川萤子はすぐに脇へ避けた。

彼女の体から漂う蚊取り線香の香りがあまりにも強烈で、高貴な幹部たちはみなくしゃみを連発していた。

何人かが彼女を横目で見て、その眼差しには軽蔑の色が浮かんでいた。まるで田舎者が蚊取り線香を香水代わりに使っていることを無言で非難しているようだった。

森川萤子は平然と立っていたが、仁藤部長に手で引っ張られた。

「片桐社長はオフィスに行かれました。早く行きましょう」

森川萤子の気のせいかもしれないが、仁藤部長は片桐陽向をかなり恐れているように感じた。