次の日は月曜日、森川萤子は片桐陽向に半日の休暇を申請し、地下鉄で民政局へ向かった。
8時50分、彼女は民政局の入り口に着き、手を繋いで入っていく恋人たちが甘い笑顔で出てくるのを見ていた。
彼女は突然、4年前に久保海人と婚姻届を出した日のことを思い出した。実はその日は天気が良くなく、風が吹き雨も降っていた。彼女は一人で民政局の前で1時間待ち、久保海人はようやくのんびりと現れた。
当時、彼女は風雨で体が冷え切っていたが、久保海人を見た時はそれでも嬉しくて、硬直した笑顔を彼に向けた。
しかし久保海人は彼女を一目も見ず、まっすぐ民政局に入っていった。
写真撮影と婚姻届の提出はわずか数分で、職員が結婚証明書を彼らに手渡すと、彼はそれを見もせず、二冊とも彼女の胸に投げつけ、隣にいる職員の驚いた表情も気にせず、民政局に入って初めての言葉を発した。