133 飲んでいるのは花酒じゃないの?

森川萤子の落ち着かない様子とは対照的に、深谷美香と橋本月香はとても上手く適応していた。

イケメンがお酒を勧めれば飲み、ブドウを食べさせてくれれば食べ、さらに森川萤子に人生は楽しむべきだと諭していた。

一本の木を失っても、森全体を手に入れるべきだと。

森川萤子はその言葉を聞いて目を丸くし、何とかイケメンが差し出すブドウを食べたものの、ほとんど喉に詰まりそうになった。

橋本月香は森川萤子の緊張した様子を見て笑いたくなった。「リラックスして、彼らはあなたを食べたりしないわ。それは別料金だから」

森川萤子:「……」

森川萤子の隣に座っていたイケメンがそれを聞いて、恥ずかしそうに言った。「萤子ちゃんが僕を気に入ってくれるなら、お金はいらないよ」

森川萤子はその「萤子ちゃん」という呼び方に背筋が凍り、急いで手を振って断った。「お兄さん、勘弁してください」

それを聞いた橋本月香と深谷美香はくすくす笑った。

しばらく騒いだ後、深谷美香はイケメンたちを追い払い、個室はようやく静かになった。

森川萤子の緊張していた体もようやくリラックスし、疲れを感じ始めた。

彼女は感慨深げに言った。「昔の天皇はどうやって左右から女性に囲まれる生活に耐えられたのかしら。見て、私の腕、鳥肌が立ってるわ」

彼女は袖をまくり上げると、腕には細かい鳥肌が立っていた。明らかに人にこのように仕えられることに慣れていない様子だった。

「それはあなたが楽しみ方を知らないだけよ。彼らの肌がどれだけ白いか見てみなさいよ。一言一言が『ダーリン』って、あなたをお母さんも分からなくなるほど甘やかしてくれるのよ、素敵じゃない」と深谷美香は言った。

橋本月香も頷いて「本当に、お金って素晴らしいものね。値段が付いているものは何でも買えるわ、愛情だって」

深谷美香は森川萤子に近づいて「そういえば、久保海人はあなたと離婚する時、いくらくれたの?」

森川萤子は一瞬固まった。「何のお金?」

「養育費や慰謝料よ。お金がなくても少なくとも家を2軒くらいはもらったでしょ?」橋本月香もこれに興味を持った。

久保家は名家の大富豪だ。お金も家も困らないから、森川萤子に少し分けるだけで、彼女の残りの人生は苦労しないはずだった。

森川萤子は手の甲をこすりながら「お金も家ももらってないわ」