美琴おばさんは鼻をすすった。「匂いに気づいた?すごいアルコールの匂いがするわ」
「気づいたよ」松本おじさんは口をとがらせた。「ほら、若松さんと森川萤子の体が濡れてる。アルコールの匂いは彼女たちから発せられているんだ」
「森川萤子は何をしているの?お母さんを久保邸から連れ出す前に、アルコールで消毒するつもりなの?」美琴おばさんは森川萤子のやり方が理解できなかった。
松本おじさんは目を回した。「見なかったのか?森川萤子が手にライターを持っていたろう。きっと死をもって脅したんだよ」
美琴おばさんは驚きのあまりしばらく言葉が出なかった。他の使用人たちはあれこれと噂し合っていた。
「若松さんもほんとに、使用人部屋に住むくらいなら、久保家にしがみついているなんて。私だったら死をもって脅すわ」