170 いじめられっぱなし

片桐陽向のスピーチは短く、質素とさえ言えるものだった。スピーチが終わると、森川萤子はさらに余興を用意していた。

二人はステージを降り、余興が始まった。

片桐陽向は森川萤子と話す機会がなく、すぐに大物たちに囲まれてしまった。

森川萤子も会場を見守らなければならず、楽ではなかった。二人は短い間顔を合わせただけで、また別々になった。

今夜は多くの来賓が出席し、皆が片桐陽向と話す機会を探していた。

片桐陽向はビジネス界で頭角を現し始め、皆に一つのシグナルを送った。片桐家は「片桐家の人はビジネスに関わらない」という規則を破り、片桐陽向を先駆者として送り込んだのだ。

そして、これは東京の将来の構図にも影響を与えることになるだろう。

江川源と江川淮は常に片桐陽向の側にいて、彼の代わりに酒を断っていたが、それでも彼はかなりの量を飲まされていた。