片桐美咲は口を尖らせ、親友の落ち込んだ表情を見て言った。「でも私、食べたいんだもん。」
森川萤子は流れに乗って、「片桐お嬢様がお好きなら、ここに置いておきますね。」
そう言うと、彼女は片桐陽向がさらに主張するのを待たずに、軽く会釈して部屋を出た。
オフィスのドアが閉まると、片桐美咲は金田恵美を引っ張ってソファに座らせた。
「おじさま、私たち仕事が終わるまで待ってるね。」
片桐陽向は冷淡な表情で、姪の顔を一瞥して、「音を立てたら出て行け。」
「はーい。」片桐美咲はおどおどと返事をし、親友と目を合わせた。
二人は暗黙の了解で、金田恵美は元々片桐陽向に挨拶しようと思っていたが、今は声を出す勇気もなかった。
片桐陽向は二人を無視し、次々と電話を受けていた。
彼は言葉少なで、ほとんどの時間は相手の話を聞き、そして的確な返答をしていた。