久保海人は全身が痛かった。彼を袋に入れた人物は間違いなく武術の達人だった。
拳が肉に当たる感触がはっきりとあったにもかかわらず、内臓や骨には傷がなく、ただ全身の筋肉が激しく痛むだけだった。
今、片桐美咲を見て、彼は機嫌が悪くなった。「どう思うって?あなたが明日ウェディングフォトが撮れないと言ったから、撮らなければいいし、結婚もしなくていい」
片桐美咲は一瞬表情が凍りつき、驚いて久保海人を見つめた。「海人さん、何を言ってるの?」
久保海人は言葉を重ねた。彼も裕福な環境で育った坊ちゃんだから、当然気性が荒い。
「言ったでしょう、ウェディングフォトが撮れないなら、結婚もしない。こんな姿で外に出たら、あなたの恥にもなる」
片桐美咲の目が赤くなり、次の瞬間には涙がこぼれそうだった。彼女は悲しみに打ちひしがれて久保海人を睨みつけた。
「ウェディングフォトのことを聞いただけなのに、そんなに怒るなんて。海人さん、私と結婚したくないなら、はっきり言ってよ。そんな皮肉な言い方しないで」
久保海人は結局大人だし、片桐美咲より年上だから、心の中で損得を考えることができる。
しかし今この状況で、彼に折れろと言っても、それは不可能だった。
彼は唇を引き締めて黙っていた。
片桐美咲の涙がさっと流れ落ちた。彼女は手にしていたバッグを掴むと久保海人に向かって投げつけた。
「いいわ、結婚しなければしないで。今すぐお腹の中の肉の塊を取り出してやる」
言い終わると、彼女は病室の外へ走り出した。
久保海人は彼女が本当に子供を堕ろしに行くのではないかと恐れ、急いで彼女を止めようとしたが、止められず、自分がベッドから落ちてしまった。
「ドン」という音がして、床が震えるほどだった。
久保海人はただでさえ全身が痛かったのに、この転落は天地を揺るがすほどで、しばらく起き上がれなかった。
片桐美咲の足音はすぐに止まった。彼女は久保海人が痛みで唸っているのを聞いて、結局心が和らぎ、本当に走り去ることはしなかった。
振り返ると、久保海人が惨めに床に這いつくばっているのが見えた。彼女は笑いたくなったが、必死に我慢して、急いで戻り、身をかがめて彼を起こそうとした。
「どこを打ったの?痛い?医者を呼んで診てもらおうか」