社長室内:
黒田真一に向き合っているため、西村絵里は緊張して心臓の鼓動が速くなった。今この瞬間、冷静を装い、気迫だけは負けないようにした。
絶対に黒田真一に振り回されてはいけない。今日起こりうる状況を予想して、あらかじめ二つの弁当を用意していた。
黒田真一が立ち上がり、長身で迫ってきた。西村絵里はほとんど自分の鼻先が男性の胸に触れるのを感じ、妖艶な気配が押し寄せてきた。
西村絵里が手に持っている花柄のお弁当箱は非常に清潔で、見ていると心地よい感覚があった。彼女の作った料理と同様に、家庭的な雰囲気を醸し出していた。
「値段を聞かせてくれ」
男性の深い海のような黒い瞳を見上げ、西村絵里はごくりと唾を飲み込み、口元に薄い笑みを浮かべた。
「様々な消費者層に対応するため、この二つのお弁当の価格も異なります。こちらは肉料理二品と野菜料理一品で、社内価格で250円にしておきましょう。この価格は文字通りの意味ではなく、肉料理が100円、野菜料理が50円、ご飯は無料なので、250円です」