第48章 黒田さんは初キス

トーテムホール内:

唇に温かい感触が伝わり、西村絵里は体が硬直した。黒田真一がこんなことをするとは思ってもみなかった。

男の支配的な気配が彼女の唇と歯の間に広がり、二人の息が絡み合い、乱れた。

しばらくして、男は舌先で彼女の口角をなぞり、そこに残ったワインの跡をなめ取り、名残惜しそうに離れた。

「これでいい」

魅惑的な赤い唇、口角のワインの跡はすでにキスで消えていた。

周囲の人々はため息をついた。これは明らかに愛情表現だった。

西村絵里:「……」

即興の演出?

ふん……

西村絵里の頭の中には、男がメイクアップアーティストに口紅が嫌いだと言っていた場面が浮かんだ。もしかして、黒田真一は最初から計画していたのだろうか?

西村絵里は小さな手を握りしめ、周囲の人々の前であることを考慮して怒りを抑えた。