腕は太ももには勝てないので、結局キッチンに行って料理をするのは西村絵里だった。
冷蔵庫には食材が揃っており、食器はすべて新品で、西村絵里は手慣れた料理をいくつか作るのに苦労はなかった。別荘には土鍋があったので、西村絵里はそれを使って骨付き肉のスープを煮込んだ。
明るい陽光が窓から差し込み、忙しく立ち働く西村絵里の姿を照らし、女性の柔らかさと温かさをより一層引き立てていた。
黒田真一がキッチンに入ってきたとき、彼の表情には少し恍惚とした様子があった。
臨海別荘に住み始めてから、キッチンはほとんど使われておらず、彼自身この別荘で料理をしたことはなかった。
今日、街で西村絵里を拾った後、ふと思いついて、女性が自分の家で料理をする姿を見たいと思った。
あの感覚は、確かに温かいものだった。
母親が亡くなってから、長年このような感覚を味わっていなかった。
思わず前に進み、彼女を抱きしめたくなるような。
西村絵里の作った料理を食べた後では、五つ星ホテルの料理でさえ、彼にとっては味気ないものに感じられるだろう。
……
黒田真一は静かに西村絵里を見つめ、どれくらいの時間が経ったのかわからなかった。
西村絵里はスープが煮上がったのを確認し、鍋つかみを持って振り返ったとき、思いがけず黒田真一の姿を目にした。男性の深く魅力的な視線に、西村絵里の手が滑った。
「あっ……」
不意をつかれ、出来立ての骨付き肉のスープが床に落ち、一部が西村絵里の両足にかかってしまった。
熱さに西村絵里は激しい痛みを感じ、顔が青ざめた。黒田真一はそれを見て表情を引き締め、素早く前に出て西村絵里を抱き寄せた。
「傷に触れないで、まず冷やさないと」
西村絵里は黒田真一に腰を抱えられ、すぐにバスルームへと運ばれた。
バスルームに着くと、西村絵里は素早く浴槽の縁に座らされ、黒田真一がシャワーヘッドで彼女の太ももの傷口に水をかけるのを見た。
これは……
「黒田真一、大丈夫です、私は丈夫だから、そこまでしなくても」
「今処置しないと、二度火傷になる可能性がある」
「私は……」
西村絵里が何か言おうとしたとき、男性が眉を寄せ、真剣な表情で腰をかがめて冷水を彼女の足にかけ、長く白い指で温度を確かめているのに気づいた。