第288章 男の狩猟性1更(1)

青空ビルの2階ロビーにて:

男たちの間に緊張が漂っていた。西村絵里の視線は終始、藤原海翔の腕の中にいる甘奈に注がれていた。黒田真一が家に帰ろうと言うのを聞いて、本能的に拒否したかった。

自分の娘はまだ藤原海翔の腕の中にいるのだから。

どんなことがあっても帰るべきではない。

そう思いながら、西村絵里は口元に微笑みを浮かべた。

「黒田真一……実は」

「黒田奥さん、私から言わなくても分かるでしょう。あなたが私と結婚した以上、あなたの家は臨海別荘です」

西村絵里:「……」

西村絵里は黒田真一の言葉に含まれる怒りを感じ取り、口元を引きつらせた。少し考えた後、頷いた。

「わかったわ」

「藤原三郎、私は先に行くわ」

「ああ」

藤原海翔は西村絵里の美しい瞳に込められた暗示を読み取った。甘奈は自分のそばにいる、自分がしっかりと甘奈の面倒を見なければならない。

藤原海翔は黒田真一の言葉に大きな打撃を受けていた。これまで西村絵里を愛するためなら何も顧みないと思っていた。

しかし、黒田真一の言うことは間違っていない。自分にはまだ藤原家がある。

自分は気ままに、好き勝手に生きることはできない。

現実と向き合わなければならない。

しかし黒田真一はそうする必要がない……

仙台市全体が彼の掌握下にある。

黒田真一のように強力な人間、王者のような男になってこそ、思いのままに生きられる。

自分の女性に望む生活を与えることができる。

この点で、藤原海翔は黒田真一に遠く及ばなかった。

藤原海翔のハンサムな顔が少し青ざめた。

西村絵里は自分の目の前で、黒田真一と一緒に行くことを強いられている。

しかし自分は何もできない……

ただじっと見ているしかない。この世界で、自分ほど情けない男はいないだろう。

藤原海翔はかつて香坂悠生を心から軽蔑していたが、今や自分も同じ臆病者だと気づいた。

自分の東栄インターナショナルは確かに黒田真一の策略を恐れてはいない、自分は全く恐れていない……しかし老爺は80歳の高齢で、確かに揉め事に耐えられない。

兄たちはそれぞれの立場で責任を果たしており、少しでも油断すれば本当に奈落の底に落ちてしまう。

……