西村絵里は藤原海翔の褒め言葉に思わず噴き出して笑った。
何が男を誘惑するだって……
何が止められないだって。
自分の娘はとても素直なのに。
西村絵里は自分の娘が早熟だということを絶対に認めない。
「藤原三郎、食事よ。私の娘を悪い方向に導かないで」
「絵里ちゃん……さっきは君の娘が僕を誘惑したんだよ……」
西村絵里:「……」
誘惑って、冗談じゃないわよ。
西村絵里が反論しようとした矢先、自分の娘が藤原海翔を誘惑し続けるのを聞いた。
「藤原おじさん、実はね、私もおじさんがすごくかっこいいと思うの。明日私たちの幼稚園に来てくれない?自慢したいな」
「もちろん、甘奈ちゃん。君の言うことなら何でも聞くよ……僕のルックスは、いつも君たち母娘のためにあるんだ。ほら、君はなんて賢いんだろう。絵里ちゃんはただのバカなんだ。僕がこんなにかっこいいのに、自慢しようともしない。学生の頃、僕が彼女に近づくたびに、彼女は僕がナンパしていると言い張ったんだ」
甘奈は小さな唇を尖らせた。はぁ、なぜか藤原おじさんから怨念深い人妻のような雰囲気を感じるのはなぜだろう。
「わかったわかった、藤原おじさん、安心して。これからは毎日おじさんのこと自慢するからね」
「もちろん、藤原おじさんは甘奈ちゃんが一番大好きだからね」
西村絵里はこの二人が仲良く親しげにしている様子を見て、思わず笑った。
この藤原海翔はいつまでも大きな子供で、甘奈は小さな大人。この二人が一緒にいると、本当に仲が良すぎる。
「さあ、もう話すのはやめて、ちゃんと食事に集中して」
「了解、ママ」
「わかったよ、絵里ちゃん」
甘奈はこっそり藤原海翔を見て、小声でつぶやいた。「藤原おじさん、ママってこんなに鬼のようなのに、それでも好きなの?」
「もちろんさ、僕は絵里ちゃんが怖い顔をしているのが好きなんだ」
甘奈は小さな口をもぐもぐさせながら、はぁ、恋って本当に人を盲目にするんだなぁ。
「ママ、音楽チャンネルに変えてもいい?今日はうちのボーイが新しいシングルを出すから、応援したいの」
西村絵里:「……」
毎回食事のたびに、甘奈はこうなのだ。静かに食事ができる環境を作ってくれないものだろうか?
西村絵里は思わず笑ったが、藤原海翔はすでに自主的にチャンネルを変えていた。