西村絵里の顔色が微かに変わった。確かに今さっき桂花ケーキを食べたばかりだった。
ここの桂花ケーキはとても風情があり、しかも完全に手作りで、彼女はずっとそれが大好きだった。
藤原海翔は彼女の好みを知っていたので、彼が注文したのだ。
思いもよらなかった……
まさか黒田真一のキスでそれがバレてしまうとは。
「西村絵里、どこで桂花ケーキを食べたのか知らないけど、さっきあなたは桂花ケーキを注文していなかったよね。」
西村絵里:「……」
男性の鋭い黒い瞳が自分をしっかりと捉えているのを感じ、西村絵里は口元に微かな笑みを浮かべた。
「黒田社長、あなたは……」
「西村絵里、言いなさい、さっきいったいどこに行ってたの?」
西村絵里:「……」
黒田真一の鋭い黒い瞳は腕の中の西村絵里をじっと見つめ続け、薄い唇を引き締め、少しも緩むことはなかった。西村絵里はその様子を見て、内心で「まずい」と思った。
藤原海翔のことを話すわけにはいかない。
でたらめを言って、何かのビジネスパートナーに会ったとも言えない。
西村絵里は深呼吸して、自ら正直に言った:「実はね、さっき友達を見かけて、挨拶をして、ちょっと何か食べて、それから別れたの。彼らはもう帰ったわ。」
黒田真一はそれを聞くと、薄い唇がかすかに上がり、指先を西村絵里の桜の花びらのように柔らかな唇に置いた。黒い瞳は海のように深く、波一つなく、そのまま西村絵里を腰から抱き上げ、自分の腕の中に抱きしめた。
「ん?」
「西村絵里、チャンスをあげているんだ。もし調べたいなら、今すぐ青空ビルの監視カメラを見に行かせることもできる。あなたが何をしていたか、すべてわかるよ。」
西村絵里はそれを聞いて顔色が微かに変わり、体全体が硬直した。
もし黒田真一が甘奈の存在を知ったら、どうなるだろう?
そうなれば、甘奈のことはもう隠せなくなる。
西村絵里は小さな手を組み合わせ、唇を噛んだ。
「黒田社長、さっき理由をつけて離れたのは私が悪かったです。でも、それは私のプライベートなことで、あなたに話せないんです。もう行かないから、それでいいでしょう?」
黒田真一はそれを聞いて口元を引き締め、大きな手で西村絵里の細い腰をつかみ、黒い瞳に笑みを浮かべたが、その笑みは目には届いていなかった。