そう思うと、西村絵里は声を詰まらせて言った。「吉田先生、監視カメラの映像を見せてください。今すぐ幼稚園に行って、誰が甘奈を連れて行ったのか確認します。とりあえず...とりあえず警察には通報しないでください。」
西村絵里は事を大きくしたくなかった。甘奈は今でも十分有名になっていた。
もしこれ以上余計なことが騒がれたら...
「わかりました、甘奈のママ。」
「はい。」
……
西村絵里がデザイン部に戻ると、カップを自分の席に置いてから、エレベーターの方向へ走っていった。
西村絵里がタクシーで花子幼稚園に着いたとき、吉田先生はすでに幼稚園の門で長い間待っていた。
「甘奈のママ、監視カメラの映像はもう確認できています。早く見てください。」
「はい。」
西村絵里は頷いて、吉田先生について監視室へ向かった。
確かに、専門の先生がすでに監視カメラの映像を取り出していた。
西村絵里の視線が目の前の画面に落ちると、先頭にいたのは藤原家の執事だった。
藤原家の執事は一団を率いて幼稚園に乗り込み、正確に甘奈のクラスを見つけ出し、そのまま甘奈を抱きかかえて立ち去った。
その動きは流れるように滑らか...
手際よく素早かった。
甘奈は明らかに困惑していて、泣きもせず騒ぎもしなかった。
そのまま幼稚園から連れ出され、黒い車に乗せられた。
……
「甘奈のママ、この人たちを知っていますか?」
「ええ、まあ知っています...」
「吉田先生、私がまず確認してみます。何か情報があれば、また連絡します。だめなら、警察に通報するしかないでしょう。」
「甘奈のママ、なぜ今警察に通報しないのですか?」
西村絵里は口元に苦笑いを浮かべ、首を振った。
「すみません、でも警察に通報しても、藤原家には効果がないと思うんです。」
藤原家は...黒田真一には敵わないとはいえ。
しかし仙台市ではやはり有力者だ。
だから...警察に通報することは、彼らの目には何の問題にもならない。藤原お爺様も老いを売りにする人物で、公然と幼稚園に人さらいに来るくらいだから、本当に恐れるものなどないのだろう。
吉田先生は西村絵里の言葉に驚いた様子だった。
これは一体どういう状況なのだろうか。
……
西村絵里はタクシーで藤原家へ直行した。