第411章 名目上の夫婦1更(9)

西村絵里:「……」

西村絵里は本当に聞きたかった、このようなカードを黒田真一は一体どれだけの女性に用意したことがあるのかと。

女性の視線が冷たく、皮肉に変わったのを察知し、黒田真一は続けて補足した。

「このようなカード……私はまだ女性に渡すのは初めてだ……これは私の唯一の追加カードだ。」

西村絵里:「……」

唯一なの?

西村絵里の表情に一瞬の不自然さが過ぎり、一時的に何を言えばいいのか分からなかった。

黒田真一の大きな手はずっとカードを差し出す姿勢のままだった。長い時間が経った後、西村絵里から口を開いた。

「ごめんなさい、黒田真一、私が気難しいわけじゃないけど……本当に受け取れないの。」

高貴な身分の象徴である黒いカード。

西村絵里は……受け取れない。

まるで黒田真一の優しさのように、西村絵里はその優しさの渦に一度はまってしまったら、もう抜け出せなくなることを恐れていた。