第525章 西村絵里に何かあってはならない2更(2)

彼女を救うことは、自分が全く考える必要もなく、とっさにした行動だった。

西村絵里:「……」

西村絵里は目の前の男性の弱々しい姿を見つめ、震える小さな手を伸ばして男性の怪我の原因を探した。視線が少し離れた石段に触れる。香坂悠生はさっきあそこにぶつかったに違いない。

「香坂悠生、あなた出血してる、私……病院に連れて行くわ。」

西村絵里の声は激しく震えていた。血があまりにも多く流れていた。

まるで錯覚のように、香坂悠生の声は弱々しく、生命の兆候が衰えているかのようだった。

「君が無事で……よかった。」

香坂悠生は口元に薄い笑みを浮かべた。自分は怪我をしたが、彼女が無事ならそれでいい。

香坂悠生は力なく西村絵里の上に倒れ、かすれた声で言った。

「絵里、俺は……君に謝らなきゃならない……ごめん、今言っても、もう遅いかもしれないけど。」

西村絵里:「……」

西村絵里は自分の上で意識を失った男性を見つめ、鼻をつく血の匂いが自分の鼻息の間に漂い、西村絵里の顔は恐ろしいほど青ざめていた。

「香坂悠生……何も起こらないで。」

お願い……何も起こらないで。

西村絵里は、自分と香坂悠生の関係が命の終わりによって終わるとは思っていなかった。

本来なら、男性と意図的に距離を置いていたのは、過去の若かりし日の出来事はとうに風と共に過ぎ去るべきだったから。

そして、自分と黒田真一の関係もあった。

当時、誰が正しくて誰が間違っていたわけでもなかった。

間違った時間に、間違った人に出会ってしまっただけ。

……

少し離れたところで。

黒田真一は元々甘奈を抱いてホールに入ったが、背後から異常な車の加速音が聞こえ、振り返ると、一台のワゴン車が西村絵里のいる方向に向かって突っ込んでいくのが見えた。

西村絵里は避けきれず……

香坂悠生が飛びかかって西村絵里を抱きしめ、ワゴン車の衝突を避けた。

ワゴン車は急ブレーキをかけて停止し、車から降りてきたのは井上莉菜だった……

黒田真一は明らかに自分の心が締め付けられるような感覚を覚えた。

これまで一度もなかったような、得ては失うという感覚が心に巡っていた。

もし……西村絵里に何かあったら。

自分はそれを考えることすらできなかった。