彼女を救うことは、自分が全く考える必要もなく、とっさにした行動だった。
西村絵里:「……」
西村絵里は目の前の男性の弱々しい姿を見つめ、震える小さな手を伸ばして男性の怪我の原因を探した。視線が少し離れた石段に触れる。香坂悠生はさっきあそこにぶつかったに違いない。
「香坂悠生、あなた出血してる、私……病院に連れて行くわ。」
西村絵里の声は激しく震えていた。血があまりにも多く流れていた。
まるで錯覚のように、香坂悠生の声は弱々しく、生命の兆候が衰えているかのようだった。
「君が無事で……よかった。」
香坂悠生は口元に薄い笑みを浮かべた。自分は怪我をしたが、彼女が無事ならそれでいい。
香坂悠生は力なく西村絵里の上に倒れ、かすれた声で言った。
「絵里、俺は……君に謝らなきゃならない……ごめん、今言っても、もう遅いかもしれないけど。」