第527章 西村絵里に何かあってはならない2更(4)

もはや単なる衝突による怪我ではなかった。

黒田真一は不安になった……

「君に何かあったら、どうすればいいのか想像もできない……」

黒田真一は誇り高い男だった。彼は「君に何かあったら、私はどうすればいいのか」とは言わなかった……

だから、意図的に「私は」という言葉を省いたのだ。

西村絵里は男に密着して抱きしめられ、息ができないほどだった。

黒田真一の声も震えていた。

だから、この男が自分を大切に思い、失いたくないと思っていると解釈してもいいのだろうか？

西村絵里は美しい瞳に一筋の光を宿し、黒田真一の言葉を聞いて、唇に薄い笑みを浮かべ、静かに言った。

「さっきは…私も何かあるかと思った」

しかし、まだやり残したことがたくさんある。

甘奈……

西村安国。

そして、母を見つけ出すこと。

西村絵里は小さな手を伸ばし、ゆっくりと黒田真一の背中を撫で、男の感情を落ち着かせながら、かすれた声で言った。

「黒田真一……もし私に何かあったら、甘奈の面倒を見てくれる？」

黒田真一は心から甘奈を好きだということを……

西村絵里はわかっていた。

「んっ……」

西村絵里は本来、黒田真一の意見を求めていたのだが、思いがけず黒田真一が急に身を屈めて唇を塞いできた。しかも黒田真一はそれだけでは足りないと感じたようだった。

切迫したキスが、押し寄せる波のように西村絵里に迫ってきた。

西村絵里は明らかに感じることができた、男の薄い唇が冷たく、さらには震えていることを。

西村絵里は瞳を暗くした……

黒田真一は今、不安と期待の間で揺れているのだろうか？

西村絵里は男の熱いキスを避けることができず、幸い廊下にはほとんど医療スタッフがいなかった。

しばらくして、西村絵里はまだ男が自分の唇から離れる気配がないのを感じ、慎重に、試すように男の強引なキスに応え始めた。やがて、男の感情が少しずつ落ち着いてくるのを感じた。

西村絵里は自分の唇がヒリヒリと痛むのを感じた……

黒田真一の最初は嵐のような激しいキスが、徐々に穏やかな流れのような優しい求めに変わっていった。

西村絵里が息苦しくなるまで、黒田真一はようやく名残惜しそうに彼女を放した。