第607章 西村絵里、あなたは私に恋をした1更(5)

言い終わると、西村絵里はまっすぐに病室のドアに向かって歩き出したが、黒田真一が素早く大きな手を伸ばして彼女の小さな手を掴んだ。

「待って……」

黒田真一が少し力を入れると、西村絵里はバランスを崩して黒田真一のいるベッドに向かって倒れ込んでしまった。男性の胸に倒れ込むのを恐れた西村絵里は、反射的に両手で自分の体を支え、黒田真一の傷口を圧迫しないようにした。

「黒田真一、あなた狂ったの？」

もし今、自分の反応が十分に早くなかったら……

自分は本当に男性の傷口の上に倒れていただろう。それは簡単に二次的な損傷を引き起こす可能性があった。

黒田真一は自分の上にいる女性をじっと見つめた。今この瞬間、女性が上で男性が下という、異常に奇妙な姿勢だった。

「黒田奥さん……私はあなたに関する問題については、私の判断はいつも不明確で、ホルモンの衝動による狂気の状態にあると思う。」

西村絵里：「……」

このスケベがまた知識をひけらかしている。

西村絵里は起き上がろうとしたが、黒田真一の大きな手に制限され、彼の上に倒れ込むことを余儀なくされた。二人の視線が空中で交差し、西村絵里は不自然に視線をそらした。

「黒田真一、あなた一体何がしたいの？」

「とても簡単だよ……西村絵里、午後、私のことを心配してくれたの？」

西村絵里：「……」

子供っぽい黒田真一。

黒田真一はまるで子供のように、飴をもらえないと決して手を離さないかのようだった。

だから……ずっと自分の答えを期待していた。

西村絵里は美しい瞳を男性のハンサムな顔に落とし、少し躊躇した後、静かに言った。

「そうよ！」

「理由は……」

「さっき言ったでしょ、あなたに命の恩を負いたくないから……」

黒田真一：「……」

心配の背後には多くの意味がある。家族の観点から、甘奈の観点から、あるいは西村絵里自身の観点から。

一体どのような観点なのか、黒田真一は目の前の女性をじっと見つめた……西村絵里は心の奥深くに思いを隠しているのに、どうして口に出すだろうか？

「私は思ったんだ……西村絵里……君は私に恋をしたんじゃないかと。」

そう言って、黒田真一は薄い唇を女性の耳たぶに近づけ、一言一句、非常に確信を持って言った。

西村絵里はこれを聞いて、再び顔色を変えた。