藤原氏:
昼食の時間、藤原景裕はデスクの上の弁当箱を取り出し、薄い唇を引き締めた。
初めて会社に弁当を持ってきた。
それも昨夜の残り物だ。
そう、主にボスの口から奪い取った食事だ。
忘れてはいない、昨日牛肉チャーハンを弁当箱に入れた時のボスの恨めしそうな眼差しを。
……
藤原景裕は立ち上がり、弁当箱を持って給湯室の方向へ歩いていった。
藤原景裕が自ら食事を温めるのは、これが初めてだった。
最上階の秘書たちは目を丸くして、おずおずと挨拶した。
「藤原社長、こんにちは」
「ああ」
秘書たちは感慨深げだった。ごく普通の食事を温めるという行為なのに、藤原景裕がやると何故かとても気品があり、他の男性たちの居場所がなくなるほどだった。
安藤萱子は昼食時からずっと藤原景裕の様子を盗み見ていたが、彼が給湯室へ向かって自ら食事を温めるのを見て、表情が微かに変わり、その後瞳に深い思考の色が浮かんだ。