工商局:
解決策がないことを知り、村上念美はもうこれ以上時間を無駄にしたくなかった。
「私はまだ用事があるので、先に失礼します……景山様、これでチャラにしましょう。今後は、あなたからのエッセンシャルオイル原料の恩義は受けません。結局、このロットのオイルは村上氏に大きな問題を引き起こしましたから」
言い終わると、村上念美は直接出口へ向かって歩き出し、景山瑞樹一人を工商局のロビーで激怒させたまま残した。
今回は、村上念美の前で本当に大恥をかいたと言えるだろう。
……
村上念美は急いで車を走らせ南町別荘に戻ると、美しい瞳に思案の色が浮かんだ。
景山瑞樹でさえ対処できない問題なら、藤原景裕に頼むしかないようだ。
実は朝からお願いするつもりだったが、木村陽太からの電話で中断されてしまった。
うーん、藤原家の人が悪さをして、藤原景裕が後始末をする……
村上念美は急に自分が悪いとは思わなくなった。
ただ、熊谷紗奈なのか藤原陽なのか、誰が邪魔をしているのかはわからない。
そう、自分の義理の両親は二人とも自分のことを好きではない。
相手は藤原景裕の実の両親であり、対応するのは村上念美にとって少し疲れることだった。
……
南町別荘に着くと、ボスが真っ先に村上念美の気配を感じ取り、走って戻ってきて彼女の周りをぐるぐると回った。
「ワンワン……」
村上念美は軽く笑い、その後ガレージの方向を見ると、藤原景裕の車が見えた。
うん、藤原景裕が帰ってきている。
……
来春さんはもう帰ってしまったが、村上念美がボスを気に入っていることを知っていたので、ボスを残して彼女の相手をさせていた。
村上念美はボスについてリビングに入ると、藤原景裕が優雅にソファに座って書類を見ているのが目に入った。
冷たく水のように、全身から気品を漂わせ、とにかく遠くから眺めるだけで近づいてはいけない存在だった。
村上念美は口元に微笑みを浮かべ、挨拶をした。
「藤原さん……」
「ああ」
村上念美は藤原景裕の冷淡な態度を見て、心の中でさらに不安になった。
「藤原さん、一緒に食事しませんか」
「いいよ」
村上念美は素早くダイニングテーブルを整え、来春さんが作っておいた夕食を出し、藤原景裕と自分のためにそれぞれご飯をよそった。