藤原景裕は淡々と口を開いた。そんな穏やかで磁性のある言葉に、村上念美の耳元まで熱くなり、心臓はドキドキと止まらなかった。
村上念美は頷いて、茶碗の中のご飯を少しずつ食べながら、突然お金持ちの女性になったような既視感を覚えた。
考えるだけで...とても幸せだった...
藤原景裕は女性が満足そうに食べているのを見て、村上念美の茶碗にさらにおかずを取り分けた。
「もっと食べて、量を調整できなくて、少し多く作りすぎたみたいだ」
村上念美:「...」
多く作りすぎたから、自分に食べさせるの?
そんなのあり?
とはいえ、村上念美はとても満足して食べた。本当にお腹が空いていたのだ。
...
夕食を終えると、時間はすでに11時を過ぎていた。
村上念美は自ら立ち上がり、静かに言った:「私が片付けます」
「いや、僕がやるよ」
「うーん」
村上念美が小さな手を伸ばして茶碗を受け取ろうとしたとき、藤原景裕に手を握られた。
男性の手のひらは熱く、まるで自分の心の底まで温めるようだった。村上念美は素直に小さな手を引っ込め、男性に片付けさせた。
村上念美は口角を上げ、二人の関係が3年前に戻ったかのようだった。
3年前、自分はよくソファでお菓子を食べながら映画を見て、ゴミを散らかしていたが、藤原景裕は少しも嫌がらずに片付けてくれていた。
そのことを思い出し、村上念美はキッチンのドア口に立ち、水槽の前で忙しく動く男性の立派な背中を見つめた。
先ほどオークションで10億円もの高額で土地を購入した男性が、今この瞬間、自分のために料理を作り、皿を洗っているなんて想像もつかない。
信じられないわ...
家庭的な男性に魅力がないなんて誰が言ったの。
藤原景裕はとても魅力的だった。
...
藤原景裕が振り返ると、村上念美が自分をぼんやりと見つめているのが見えた。彼は薄い唇を引き締めた。
「フルーツを洗ったばかりだ、テーブルの上にある」
「はい」
村上念美は頷いてソファに向かうと、テーブルの上に洗いたてのブドウが置かれているのを見た。
村上念美は少しずつブドウを食べていると、しばらくして藤原景裕がキッチンから出てくるのが見えた。
二人の温かい時間は、このクリスマスイブにとりわけ大切に感じられた。
「行こう、もう一つ場所に連れて行きたい」
「うん」