村上家は何か家族企業というわけではなく、自分が村上翔偉と結婚した後に一緒に苦労して築き上げたものだった。
ついでに木下麻琳は渡辺愛美に村上家のことについて話し始めた。例えば村上念美が小さい頃の面白いエピソードなど…
例えば…男子の下着に胡椒を振りかけたこととか。
例えば藤原景裕を追いかけると宣言したこととか…
とにかく村上念美の学生時代の面白いエピソードは、いくらでもあった。
渡辺愛美は思わず笑い声を漏らした。村上念美は見た目は大人しそうだが、実際には、とげのある子だったのだな。
村上念美は顔を赤らめながら渡辺愛美に当時なぜそんなことをしたのか説明するしかなかった…
それを聞いた渡辺愛美はさらに笑いが止まらなくなった。
「笑いすぎて腹筋が痛いわ、景裕、あなたの奥さんは本当に可愛いわね…」
藤原景裕はその言葉を聞いて口角を上げ、村上念美の隣に座り、彼女の小さな手を弄びながら、頷いた。
「少し可愛いですね…実はかなりやんちゃでもあります…おばあさま、もっと接していくうちに、ますます好きになりますよ」
「うん…それは、信じるわ」
渡辺愛美は頷き、それから木下麻琳を見て、静かに尋ねた。「そういえば、麻琳、あなたはずっと村上家のことばかり話していたけど、どうしてあなたの家族のことを話してくれないの?念美のおじいさんとおばあさん、一度も話に出てこなかったわね…」
この話題になると、木下麻琳の表情が少し暗くなった。
渡辺愛美の言葉は、間違いなく彼女の心の奥深くに触れるものだった。
しかし渡辺愛美も他人ではないので、木下麻琳は過去の思い出をすべて打ち明けることにした。
「実は…おばさま、私には両親がいなくて、孤児院で育ったんです…後に養子に出されて、養父母がいるだけです」
木下麻琳は淡々と口角を引き上げた。
「それから16歳の時に養父母の家を出て独立しました…働きながら学校に通い、そして村上翔偉と知り合って…」
木下麻琳はさらりと話を進め、過去の出来事についてあまり多くを語らなかったが、表面上は平静を装いながらも、多くの辛酸をさらりと通り過ぎていった。
実際、これらのことは村上念美も以前あまり聞いたことがなかった…
なぜなら、これらの過去の出来事について、両親は自分と安子、村上佑城に話すことはなかったからだ。