108 熊谷紗奈と安藤萱子の自滅_6
彼は藤原氏を村上念美に与えた...もし自分が二人に離婚を迫ったら。
藤原景裕は無一文になってしまうのだ...
これは冗談ではすまされない。
自分の息子のことは、自分がよく分かっている...
彼は村上念美を守るためのあらゆる道を歩んできた。
...
熊谷紗奈はタイミングが良さそうだと見て、自らワイングラスを脇に置き、その後手を上げて額に当てた。
「あの...景裕、お母さん気分が悪いの、上の階に休みに連れて行ってくれない？」
熊谷紗奈は今日ずっと顔色が青白く、額には冷や汗をかいていた。藤原景裕はそれを見て眉をひそめ言った：「医者を呼んだ方がいい？高木凡生に医者を呼ばせよう。」
「いいの...大丈夫...あなたがお母さんを上の階に連れて行って少し休ませてくれれば。」
「そうそう、他の人には言わないで、お母さんは他の人に心配させたくないの。」
「わかった。」
藤原景裕は頷き、大きな手で熊谷紗奈の腕を支え、薄い唇を引き締めた。
「まず上の階にお連れします。それでもまだ具合が悪いようなら、私のかかりつけ医を呼んで診てもらいましょう。」
「いいわ...」
熊谷紗奈は頷き、こっそりと藤原景裕の表情を窺った。大体わかっていた、自己の息子は孝行者だということを。
もし村上念美がいなければ、藤原景裕は間違いなく自分のコントロール下にあっただろう。
あの小娘が...自分の幸せをすべて台無しにした。
自分と息子を奪い合っている。
...
藤原景裕は熊谷紗奈を支えて上の階へと向かった。
村上念美と木下麻琳が戻ってきたとき、二人の去っていく背中を見て、唇を噛み、藤原景裕が自分と熊谷紗奈の間で板挟みになっていることを理解した。
結局...熊谷紗奈がどんなに悪くても、彼の実の母親なのだから。
...
「念美、この熊谷紗奈はあなたのことを嫌っているんじゃない？」
木下麻琳は心配そうに口を開いた。
「お母さん...変なこと考えないで、そんなことないわ。それに、姑と嫁の関係って、いつもこうでしょ...二人の女性と一人の男性の戦い...私のことは心配しないで、いい？」
村上念美は必死に口元に笑みを浮かべ、自分の言葉が誠実に聞こえるようにした。