堇顔

　藤原景裕と村上家の三女・念美は、誰もが知る幼なじみ。
　彼は幼い頃から彼女を溺愛し、婚約に至るのも当然の流れだった――はずが、念美は突然その婚約を破棄し、別の男性のもとへ海外へと旅立ってしまう。
　それから三年。
　念美が再び日本に戻ってきたとき、彼女はなんと藤原に「結婚して」と迫る。
　世間は騒然、「あの女はすぐに捨てられるに違いない」と噂が飛び交う。
　だが誰も知らなかった。藤原景裕がずっと前からすべてを仕組み、綿密に張り巡らせた罠によって彼女を呼び戻し、迎え入れ、そして――一生のぬくもりを与えると決めていたことを。

✦ 主人公同士は心も身体もピュアな1対1！
✦ 強い女×強い男、浮気もクズも一切ナシ！
✦ ドロドロや無理な虐待描写ナシ！
✦ ひたすら甘くて深い、極上の溺愛ラブストーリー！

愛は策略の中に

熊谷紗奈は少し震えていて、冷たい目で目の前の村上念美を睨みつけ、嫌悪感を露わにしていた。


少し間を置いて、村上念美は思わず問いただした。「一つ聞きたいことがあるの...ずっと前から聞きたかったことよ。今日ははっきりさせたいの。」


「あなたは...なぜ私にそんなことをしたの？」


これは村上念美にとって、ずっと解けない謎だった。


どうしても理解できなかった...


自分と熊谷紗奈の間には以前から対立や衝突はなかった。強いて言えば、いわゆる姑と嫁の対立だが、まさか...自分が彼女から息子を奪ったとでも？


熊谷紗奈と藤原景裕は親密ではなく、奪い合うという話ではなかった。


だから、熊谷紗奈がなぜそんなことをしたのか、村上念美は本当に理解できなかった。


熊谷紗奈は黙り込んだ。あの秘密は...自分の最後の尊厳だった。


もしその秘密が明らかになれば、自分は何も残らず、誰からも踏みにじられることになる。


車内の雰囲気は緊張感に包まれていた。


村上念美は口元に薄い笑みを浮かべ、何気なく言った。「あなたがこんなに寡黙なのを見るのは珍しいわね。どうやら、あなたは話すつもりはないようね。まあいいわ、話さなくても、私はいずれ調べ出すから。」


「村上念美、言っておくわ。これは全部あなたが自分で招いたことよ...あなたが自分から近づいてきたのよ。あなたは藤原景裕の前に、私の前に現れるべきじゃなかった！特にその顔...私はそれを見るたびに腹が立つ、吐き気がする...」


後部座席の熊谷紗奈は顔を歪め、ほとんど怒鳴り声で言った。


村上念美はその言葉を聞いて美しい瞳を見開いた。この顔？


それとも熊谷紗奈の感情を刺激したから？


彼女が老いて魅力を失ったから？


村上念美は口元を引き締めた。熊谷紗奈の言葉は、さらに大きな疑問を生み出した。


彼女の言いたいことは...自分が彼女の前に現れなければよかったということか。


村上念美は口元に冷たい笑みを浮かべ、試すように言った。「あなたはまだ理由を言えないのね。なぜあんなことをしたの？」


「村上念美...あなたに知る資格はないわ...」


111 彼女の気持ちを理解したいだけ_3