自分の婚約者が今誘惑されているのに、彼女はまだ平然と、面白がって見ている状態だった。
「うん。」
木村陽太は淡々と口を開いた。穏やかさは相変わらずだったが、言葉には距離感が滲んでいた。
特に感情の起伏もなく、目の前の夏目奈々をまるで見知らぬ人のように扱っていた。
夏目愛子はその様子を見て、思わず噴き出しそうになった。
木村陽太おじさんは全く自分を失望させなかった。
...
夏目奈々は心の中でつぶやいた。自分はメイクも完璧で、スタイルも夏目愛子の洗濯板のような体型と比べれば素晴らしいはずなのに。
なのにこの木村陽太ときたら、まともに自分を見ようともしない...
夏目奈々は心の中で腹を立てながらも、必死に表情をコントロールして、何も変わらないように見せていた。
「じゃあ...木村さん、福子、おじさん、おばさん、私たちはこれで失礼します。」