天誉インターナショナルホテル内:
ポケットの携帯が鳴り続け、相馬紗奈は素早く携帯を取り出し、画面に表示された村上念美からの電話を見て、すぐに応答した。
「念美...」
村上念美は何度も自分に電話をかけてきた。きっと重要な用件があるのだろう。
「紗奈、やっと電話に出てくれた。心配で死にそうだったわ。今どこにいるの?」
村上念美は焦って額に汗をかいていた。沢田恒夫がどんなことをするか想像もつかない。
なりすましという行為をする人間だ。それも実の娘を田舎者に嫁がせようとしている...
小さい頃は見捨てたくせに。
こんな最低の父親は、世界でも珍しいだろう。
村上念美は、相馬紗奈が虎穴に入ってどんなことが起こるか想像するのも恐ろしかった。
相馬紗奈:「...」
村上念美が焦っているのが伝わってきた。