第109章 誰かが路上で忘憂の匂い袋を売っている

国家と民族の尊厳が挑発され、今回の囲碁の局面事件は当然注目を集めていた。街を歩けば、至る所でスマホを手に最新情報を確認する人々の姿が見られた。

誰もが知りたがっていた。果たして誰かがこの局面を破ることができるのか、そしてあの騒ぎを起こしているロシア人たちを九領から追い出せるのか。

しかし、これだけの日数が経ち、名だたる囲碁の達人たちも現れたが、残念ながら誰一人として局面を破ることができなかった。

もしあのロシア人たちの好き勝手を許し続けるなら、我が九領の威厳はどこにあるのか?

国民全体が怒りを感じると同時に、言いようのない屈辱感を味わっていた。しかし、技術で劣っているのなら、どうすることもできないではないか?

そういえば、アサガオという名の囲碁の腕前が神業の域に達していると言われていたではないか?

なぜ今になっても現れないのだろう?

もしかして相手の局面を破ることができないのだろうか?

そう考えると、ほとんどの人々はため息をつき、意気消沈していた。

我が大国に、本当の囲碁の達人は一人もいないのだろうか?

……

同時刻、別の賑やかな通りの端で、一人の若者が何かを売るために露店を出していた。目の前には一枚の敷物が広げられ、その上には十数個の匂い袋が置かれていた。匂い袋には「忘憂」の二文字が刺繍されていた。

まさにこの二文字が人々の注目を集めていた。「忘憂」の名は誰もが知るほど有名で、社会的地位が低い人々でさえ、多少は耳にしたことがあるほどだった。

しかし彼らが知っているのは、忘憂の匂い袋が良いものであり、お金があっても簡単には手に入らないような代物で、噂によると恐ろしく高価で、一つの匂い袋が数百万円もするということだけだった。

そして今ここに現れた忘憂の匂い袋は、考えるまでもなく、きっと偽物だろう。彼らはただ物珍しさに見ているだけだった。

「この匂い袋はいくらですか?」と誰かが価格を尋ねた。

若者は怠そうに五本の指を伸ばし、「五千円」と答えた。

「五千円?こんな偽物に五千円も?強盗でもするつもりか!」

若者は眉をひそめ、高すぎるのかと思い、「じゃあ五百円にしよう。欲しければ持っていけ」と言い直した。

値段を聞いた人はすぐに笑い出し、嘲笑して言った。「まさに偽物中の偽物だな。一瞬五千円、次は五百円って、からかってるのか?」