第157章 みんな人生を疑いたくなった

厳谷君彦は放課後、麗水ベイタウンに帰ると、実の兄が魂を失ったような死にそうな様子を見て、思わず驚いて尋ねた。「どうしたの？」

向井涼太は眉をひそめ、ため息をついた。「はぁ、お前の兄貴は人生を疑いたくなってるんだ。俺も人生を疑いたくなってる。」

厳谷君彦は眉をひそめ、彼が何を言っているのか全く理解できなかった。「一体何があったの？」

「何があったって、厳谷さんの妖精さんのことだよ。」

「妖精さん？」

厳谷君彦は最近、向井涼太がよく言っていたことを思い出した。兄が恋煩いにかかり、妖精のように美しい女の子を好きになったが、誰なのかわからないということを。

突然興味を持ったように、厳谷君彦はバックパックをソファに投げ、そのままソファに座り、ソファの反対側でぐったりしている実の兄を見て、また尋ねた。「誰が妖精さんなの？彼女が兄さんを振ったの？」

向井涼太はまたため息をついた。「はぁ、今は振るとか振らないとかの問題じゃないんだ。」

「じゃあ何の問題なの？」厳谷君彦は混乱した。

「そういえば、アオピエはお前と同じ学校だろ？彼女が美しくなったのに、なぜ帰ってきて一言も言わなかったんだ？」

向井涼太は急いで体を起こして尋ねた。

その名前を聞くのも嫌だというように、厳谷君彦はすぐに嫌悪感を示して眉をひそめた。「どれだけ美しくなったところで何の意味がある？テストは最下位だし、今は他人の曲を盗んで金を稼いでいる。」

そんな人間とクラスメイトであることさえ、大きな恥だと感じていた。

「今はそれが問題じゃないんだ。問題は...自分で兄貴に聞いてみろよ、はぁ。」

向井涼太は多くを語れば語るほど涙が出そうだと感じた。なぜ彼らはあの人がアオピエだと早く気づかなかったのだろう？

今はマジで気まずい！

「お前たちのことなんてどうでもいいよ。」

厳谷君彦は無関心な様子で、立ち上がってバックパックを持って階段を上がった。

彼は自分の部屋に戻ると、まず風呂に入り、出てきてから数学のテスト用紙を研究し始めた。魔王あさねが出した数学の参考書と一緒に、繰り返し見た。

認めざるを得ないが、魔王あさねは確かに天才で、彼女に少し憧れを抱くほどだった。