「こいつはこんなにケチなのに、オークションに行く勇気があるなんて?」
青木朝音は本当に驚いていた。
「君が行くなら、僕も行くよ」古川松陰はそう言うと、また非常に満足そうに水を一口飲んだ。
やはり妻が飲んだ水は甘いものだ。
「忘憂の匂い袋がその日にオークションにかけられるって聞いたけど?」
青木朝音はさりげなく尋ねると、すぐに視線をそらした。彼女はこの男が水を飲むだけでもこんなに魅力的だと感じ、もし見続けたら本当に彼に飛びかかって、死ぬほどキスしてしまうかもしれないと思った。
「その時になってみよう、たぶん行くと思う」
青木朝音は自分のアカウントが誰かに奪われたこと、しかもその人が特に嫌いな真田千晴だということを考えるだけで、目の奥が一瞬にして冷たい氷のようになり、すでにどうやってアカウントを取り戻すか考え始めていた。