「皆さん、こんにちは。私は蝶子です。」
蝶子は笑顔で自己紹介し、目を数人の胸元に走らせ、やはり向井坊ちゃんと厳谷十七たちだと確認すると、心の中でひそかに喜んだ。
結局、青木会では、向井坊ちゃんと厳谷十七たちこそが最も地位が高く、最も尊敬されるハッカーであり、このような人たちだけが彼女の友人になる資格があった。
しかし、彼女の視線は最終的に北川倫慶とその胸の勲章に落ち着いた。なぜなら、彼女は既に影天丸が実は九領からやって来た人物だと知っていたからだ。
しかも同様に九領側の最高峰のハッカーだった。
九領の人々は、青木会のこちら側の人々よりもさらに高貴な身分を持ち、九領局はずっと彼女が夢見ていた場所だった。
ところが、北川倫慶は一人で黙々と酒を飲み、時々入り口の方向を見るだけで、蝶子には全く目もくれず、この女性に興味がないようだった。
「Jキングはまだ来ないのかな?」
北川倫慶はつぶやき、心配そうな様子だった。ただ、幸いにも皆マスクをつけているので、素顔を晒すことはなく、Jキングは安全なはずだと信じていた。
「あなたたちもJキングを待っているの?」
蝶子は笑顔で皆に尋ねた。実は彼女もJキングが一体誰なのか非常に気になっていた。きっとイケメンに違いないだろう?
Jキングが現れたら、彼と良い関係を築かなければならない。
Jキングは青木会と九領の宝物であり、大勢の人が彼に取り入ろうとするだろう。
「蝶子、なんだか声に聞き覚えがあるような気がするんだけど。もしかして知り合いかな?」向井涼太は疑問と好奇心を持って尋ねた。
蝶子も彼の声に聞き覚えがあるようで、驚いた表情を浮かべた。「あなたの声にも聞き覚えがあるわ。もしかして、あの...」
向井坊ちゃん、厳谷十七...もしかして向井涼太と厳谷究?
蝶子は急に気づいたようだった。なるほど、あの親近感はこれが理由だったのか。彼らだったのか?
向井涼太はすぐに立ち上がり、蝶子を脇に引っ張って、小声で尋ねた。「君は真田お嬢様?」
真田千晴は少し驚き、すぐに喜びの表情を浮かべた。「本当に向井涼太なの?」
「うん、俺だよ。」
向井涼太は知り合いに出会うとは思ってもみなかったようで、不敵に笑った。「それにしても意外だね、真田お嬢様もハッカーだったなんて。」
「お互い様ね。」