彼は動画を見ていた。映像の解像度と色合いから、その動画が何年も前に撮影されたものだということがわかった。
動画の中の風景はとても馴染みがあり、森川記憶は本能的に視線をそちらに向けた。彼女がまだ撮影背景がどこなのかをはっきりと確認する前に、まず中に現れた赤い服を着た少女に注意を引かれた。
顔をはっきりと見る必要もなく、一目見ただけで、森川記憶はその赤い服の少女が若い頃の自分だとわかった。
「髙橋余光」は仕事に忙しいのではなく、彼女の若い頃の動画を見ていたのだ……しかも、これだけ長い年月が経っているのに、彼はずっとそれらの古い動画を保存していたのだろうか?
森川記憶の心臓は、突然二拍ほど飛んだ。
彼女が落ち着きを取り戻し、もっとよく見ようとしていたとき、動画に集中していた「髙橋余光」は横に誰かが立っていることに気づいたようで、少し顔を向け、彼女の方を見た。彼女の顔に視線が触れた瞬間、彼の表情は明らかに一瞬硬くなり、その後何かに気づいたかのように、急に手を上げてパソコンを強く閉じた。