第121章 世界中に隠れてあなたを愛する(1)

誰かの手のひらに大切に包まれているような温もりが、突然、森川記憶の胸いっぱいに広がり、病気で意識がもうろうとしていた彼女は、この瞬間、奇跡的に静かになった。

しばらくして、腕から針が抜かれ、そして森川記憶は先ほど話していた人がまた口を開くのを聞いた。「この薬は、彼女が目を覚ましたら、必ず飲ませてください。私は病院に用事があるので、先に行かなければなりません。何かあれば連絡してください……」

ずっと話していたこの人は、医者だったのか……森川記憶が考えを巡らせていると、また医者の声が耳に入ってきた。「……見送りは結構です。ここに残って彼女の世話をしてあげてください。」

続いて、荷物をまとめる音が一連と聞こえ、それから去っていく足音、そしてドアが開いて閉まる音がした。