第167章 あなたはこれが好きなんでしょう？（7）

森川記憶は無意識に手を伸ばし、運転席の背もたれを押さえた。体を安定させて顔を上げると、車はすでに道路に出ていた。

髙橋綾人の車のスピードは驚くほど速く、森川記憶は後部座席に座っていたため彼の表情は見えなかったが、彼の周りの気圧が低く、車内の空気まで薄くなったように感じ、呼吸が少し苦しかった。

髙橋綾人は何も言わず、そんな様子を見た森川記憶はさらに声を出す勇気がなかった。

車内は恐ろしいほど静かだった。

森川記憶が髙橋綾人は一体自分をどこへ連れて行くつもりなのかと考えていたとき、車は急ブレーキをかけて停止した。

心の準備ができていなかった森川記憶は、体が前に傾き、額が後部座席にぶつかった。

刺すような痛みに眉間をしかめたが、まだ状況を把握する前に、隣のドアが開き、男の手が彼女の腕をつかんで車から引きずり出した。