第153章 私と条件を交渉する資格があるのか?(3)

森川記憶が二人を見てから、今まで一言しか話していなかった髙橋綾人は、ここまで聞いて、突然冷笑した。「俺と条件を交渉するだと?お前に資格があるのか?」

千歌は髙橋綾人の反撃に一瞬表情が凍りつき、明らかに面目を保てなくなった。しばらくして、やっと口を開いたが、先ほどのような自信に満ちた声ではなかった。「条件交渉じゃないわ、本当に心から助けたいと思って...」

「心から?」髙橋綾人の目尻に冷たい色が浮かび、最初から最後まで千歌を見ることなく、少し顔を横に向け、冷たい視線を向けた。再び口を開いた時の口調は少し低くなり、無形の威厳を帯びていた。「その偽善的な態度はやめろ。林田正益が投資を引き上げたのはお前が裏で仕組んだことだということを、俺が知らないとでも思ったのか!また、お前がそこまで苦心して色々とやっている目的が何なのか、俺に見抜けないとでも思ったのか!」

森川記憶はここまで聞いて、すべてを理解した。

なるほど、林田正益が投資を引き上げたのは、千歌が裏で唆したからだった。そして千歌がそうしたのは、ただ髙橋綾人の前に難題を突きつけ、彼女を『三千の狂い』の撮影現場から追い出すよう強制するためだったのだ!

しかし、彼女を撮影現場から去らせるだけで解決できる問題なのに、髙橋綾人はなぜそうしないのだろう?

森川記憶は眉をひそめ、目を伏せた。

しばらくして、彼女の心の中にある理由が浮かんできた:もしかして余光さんが彼に助けを求めたからではないだろうか?

それ以外に、森川記憶はこのすべてを説明できる二つ目の理由を思いつくことができなかった。

ここまで考えた森川記憶は、再び顔を上げ、こっそりと髙橋綾人と千歌を見つめた。

千歌は自分のしたことすべてが髙橋綾人に見透かされていたとは思っていなかったようで、表情には明らかに数分の困惑が見えた。彼女は何度も深呼吸してから、ようやく口を開いた。「髙橋綾人、私がどうして林田正益と組んであなたを困らせるようなことをするの?あなたは知っているはず、私はあなたに本気なの、私は小さい頃からずっとあなたのこと好き...」

森川記憶が考えるまでもなく、千歌が次に言おうとしていたのは「好きだった」という言葉だということは明らかだった。