第213章 唯一彼女を忘れなかった人(3)

彼女はためらいながら、ゆっくりと視線を彼の眠る顔に移し、そこで止まった。

彼女は思いもしなかった。電話で落ち込んだ声で、何気なく足を捻ったと言っただけなのに、彼がそれを大事なことのように気にかけてくれるなんて。

彼の前では、大切にされ、大事にされているような感覚があった。まるで自分がとても重要で、欠かせない存在であるかのように。

森川記憶の表情には大きな変化はなかったが、スマホを握る指先には少し力が入っていた。彼女は自分の心の中で再び感情の波が押し寄せてくるのをはっきりと感じていた。

しばらくして、森川記憶はようやく「髙橋余光」から視線を外した。彼からの新年のプレゼントを思い出し、スマホを置いて、そっと包装を開けた。

中には非常に精巧なダイヤモンドのブレスレットが入っていた。