森川記憶は自分と髙橋綾人がどれだけの間見つめ合っていたのか分からなかった。彼に薬を塗るために、ソファから屈んだ両足がしびれてきて、やっと我に返った。
彼女はまだ彼の手を握ったままだった……
森川記憶は慌てて髙橋綾人の視線を避け、気まずそうに指先の力を緩めた。
手の柔らかな感触が消えたことで、髙橋綾人は眉をひそめ、無意識に包帯で巻かれた自分の手を見た。
彼は空っぽになった指先をしばらく見つめ、ようやく完全に我に返った。
さっき彼女が薬を塗っている時、彼は彼女の真剣で美しい顔立ちを見つめ、うっとりしていたのだ……
髙橋綾人はそっと深呼吸をして、胸の中で湧き上がった波動を抑え、再び目を上げて少女を見た。
おそらく恥ずかしさからか、彼女は少し俯いていて、露わになった白い首筋まで薄っすらと赤くなっていた。