第277章 あなたは決して一人ではない、あなたにはまだ私がいる(7)

森川記憶はエレベーターに乗り、自分の階に到着すると、2020号室の前を通りかかった時、ドアが開いていて、中から断続的な泣き声が聞こえてきた。

森川記憶は好奇心から、無意識に開いたドアの中を覗き込んだ。一人の女の子が床に屈んでスーツケースを整理しており、その周りには2、3人の女の子が集まって彼女を慰めていた。

「未羽、もう泣かないで。ここを離れても、次の仕事場を見つければいいじゃない。永久に失業するわけじゃないんだから」

未羽……それは撮影チームが雇ったメイクアップアーティストじゃないか?彼女は『三千の狂い』の撮影チームを去るのか?彼女たちの会話から察するに、この未羽というメイクアップアーティストは、あまり去りたくないようだった……

森川記憶は驚いて眉をひそめ、部屋の前を通る足取りをかなり遅くした。