髙橋綾人とデブは個室に戻って約30分後、宴会は終わった。
髙橋綾人は会計を済ませ、三人は楼外楼から出てきた。
デブは和歌山に出張中で、会社がホテルを予約していた。まだ個室にいる時に、彼はすでに携帯で車を呼んでいた。
三人は楼外楼の向かい側の琵琶湖のほとりに立って、わずか2分ほどで、デブが呼んだ車が到着した。
デブは少し飲みすぎていて、髙橋綾人の肩を抱き、別れの言葉を何度も繰り返し言った。配車サービスの運転手が窓を下げて急かすまで、デブはようやくドアを開け、車に乗り込んだ。
車がゆっくりと加速し、デブは頭を窓から出して、まだ何かを言い続けていた。車が遠ざかり、声が完全に聞こえなくなっても、森川記憶はまだデブが手を振っているのを見ることができた。
車が曲がり、完全に姿が見えなくなった。