ほんの数十秒で、森川記憶は髙橋綾人のキスによって全身の力が抜け、彼の腕に支えられてかろうじて地面に崩れ落ちずにいた。
彼は彼女の体を支えながらキスするのでは物足りないと感じたのか、突然手を彼女の腰に移し、軽く力を入れて彼女を抱き上げた。キスをしながら歩いてリビングのグレーの装飾鏡の前まで行くと、くるりと回って彼女を冷たい鏡面に押し付け、自分の体重で彼女を押さえつけた。こうすれば彼女が滑り落ちて床に崩れることはないと確認すると、再び激しく彼女の震える唇を攻め立てた。
キスがどんどん激しくなるにつれ、鏡に置いていた彼の手は思わず少しずつ彼女の頭上へと移動し、彼女の長い髪をたどって耳元へ、そして細く白い首筋へと移っていった。
彼女の肌は繊細でなめらかで、彼は手放すことができず、いつまでも触れていたいと思った。彼は彼女へのキスの力を強めながら、指先を彼女の鎖骨へと滑らせた。彼は繰り返し指の腹で彼女の繊細な鎖骨をなぞった後、ゆっくりと下へ移動させ、彼女のバスローブの襟元から手を滑り込ませた。