第423章 私は本当に愛している、私と結ばれない彼女を (3)

以前なら、彼女は本当に思う存分喜べたはずだが、今では、髙橋余光が彼女に優しくすればするほど、彼女にとっては苦痛でしかなかった。

余光さんとは三ヶ月会っていなかったが、今日会って、彼は彼女にこんな素晴らしい景色を見せてくれた。でも彼女は?

彼女は彼との協議結婚の過程で、彼の弟と関係を持ち、さらにその弟に心を動かされてしまった……

森川記憶は空の果てまで昇っていく、まるで星のように輝く天灯を見つめながら、胸の奥に痛みを感じた。

彼女は何も言わず、彼はメッセージを打たず、山の中腹は極度の静寂に包まれていた。

夜風が吹いてきて、彼女の長い髪が彼の頬をなでた。くすぐったく、魅惑的な髪の香りがした。

髙橋綾人は携帯を握る指に力が入り、思わず森川記憶の方を見た。

少女は顔を上げ、夜空の天灯を見つめながら、何かを考えているようだった。